赤い傘を持つタマゴタケとベニテングタケ。どちらも夏から秋の林で見られるテングタケの仲間だが、タマゴタケは食用とされ、ベニテングタケは有毒とされる。傘の上の白いイボだけで見分けられると思いがちだが、ベニテングタケのイボは雨などで落ちることがある。今回は手元の観察写真と公的機関の資料を照らし合わせ、ヒダ、柄、ツバ、ツボの違いを整理する。
注意:これは観察のための比較記事であり、野生きのこの食用を判定する手順ではない。色や形は成長段階、個体差、天候、写真の写り方で変わる。確実に同定できないきのこは採食しないでほしい。
まずはヒダと柄の色を見る
厚生労働省などの資料が比較点として挙げるのは、傘の裏のヒダと柄。タマゴタケのヒダは黄色で、柄も黄色を基調とし、橙色のだんだら模様が見られる。一方、ベニテングタケのヒダは白く、柄も通常は白色系だ。

ただし「黄色っぽく見えたからタマゴタケ」とは決められない。光の色や汚れによって白色系の柄がクリーム色に見えることもあり、ベニテングタケのツバを白〜淡黄色と記載する菌類資料もある。見るべきなのは一部分の印象ではなく、ヒダと柄、柄の模様、根元まで含めた特徴の組み合わせだ。
タマゴタケとベニテングタケの比較表
| 観察する場所 | タマゴタケ | ベニテングタケ |
|---|---|---|
| 傘 | 赤〜橙色。縁に条線が見られ、通常は白いイボがない | 赤〜橙色。白色系のイボが付くことが多いが、雨などで落ちる |
| ヒダ | 黄色 | 白色 |
| 柄 | 黄色を基調とし、橙色のだんだら模様がある | 通常は白色系。根元は球状に膨らむ |
| ツバ | 橙色〜黄色の膜質のツバ | 白色系の膜質のツバ。淡く黄みを帯びる記載もある |
| ツボ・根元 | 白く、深い袋状のツボが残る | 膨らんだ根元にイボの名残が環状に並ぶ。深い袋状ではない |
| 柄の内部 | 中空 | 中空と記載されるため、判別点にならない |
| 食毒 | 食用とされる | 有毒。食べない |
白いイボがなくてもベニテングタケの可能性はある

ベニテングタケの赤い傘には白っぽいイボが点在することが多い。しかし、そのイボは雨で落ち、傘が滑らかに見えることがある。厚生労働省は、イボが取れた個体をタマゴタケと取り違える可能性を注意喚起している。反対に、今回の写真のようにイボが残っていても、傘の上面だけではヒダや根元の違いを確かめられない。
ツバは色を参考に、ツボは形を見る
柄の途中に垂れ下がるツバは両者にある。タマゴタケでは橙色〜黄色、ベニテングタケでは白色系とされるが、ツバの形だけで二者を分けるのは難しい。破れたり落ちたりすることもあるため、色も補助的な観察点と考えたい。

根元のツボには、よりはっきりした違いがある。タマゴタケは白く深い袋状のツボを破って伸びる。ベニテングタケでは根元が球状に膨らみ、ツボの名残であるイボが環状に並ぶ。根元が落ち葉や土に隠れている写真では、この重要な部分を比較できない。
なお「ベニテングタケは柄が詰まった中実、タマゴタケは中空」という見分け方は使えない。国立医薬品食品衛生研究所の比較資料では、両者とも柄を中空と記載している。
観察は楽しく、食用判断は慎重に
この2種を観察するときは、傘の上面だけでなく、ヒダ、柄の模様とツバ、根元のツボまで記録すると比較しやすい。タマゴタケとベニテングタケ以外にも似たテングタケ類があり、幼い個体や傷んだ個体では特徴がそろわないこともある。写真や生成AIの回答を根拠に野生きのこを食べることは避け、少しでも迷うものは食べないことが大切だ。
もし野生きのこを食べたあとに体調の異変が出た場合は、速やかに医療機関へ相談する。残ったきのこや料理、撮影した写真は、可能なら診断の参考として保管しておく。
参考資料:国立医薬品食品衛生研究所「毒きのこに気をつけて」/厚生労働省「ベニテングタケ」/森林総合研究所「タマゴタケ」/Landcare Research「Amanita muscaria」